出っ歯の矯正

出っ歯とは

出っ歯とは、上の歯が正常な位置よりも前方に飛び出た状態のことを言います。

一般的に、上の前歯が下の前歯よりもかなり前に出ている場合は出っ歯とされます。

歯科用語では「上顎前突」と呼ばれ、日本人に多い歯並びの1つです。

出っ歯の原因

出っ歯は、主に4つの原因が考えられます。

  • 舌で歯を押す
  • 指しゃぶりや爪を噛む
  • 子どもの頃からの癖
  • 遺伝

1つずつ解説していきます。

舌で歯を押す

通常、私たちは息をする時や飲み込む時、舌を上あごに軽く触れさせることが多いです。

その際、舌を強く押し出す癖があると、圧力で前の歯に常に力がかかり続けることになります。

特に、小さい頃からこのような癖があると、成長とともに前の歯が徐々に前方に押し出されてしまい、出っ歯の原因となることがあります。

舌で歯を押す癖は、意識しないとなかなか気づきにくいものです。

舌を歯に押し当てる動作は、話す時や飲み込む時に自然と行われるため、普段の生活の中で無意識に行っていることが多いです。

指しゃぶりや爪を噛む

子供が指しゃぶりをしたり爪を噛んだりすると、歯に圧力がかかり、上の歯が下の歯よりも前に出る場合があります。

歯が生え変わる時期に、指しゃぶりや爪を噛む習慣が続くと、歯の発育に悪影響を及ぼす可能性があります。

口呼吸

本来、舌は上顎に軽く触れている状態が理想です。

しかし、口呼吸になると舌が下がり、上顎の成長を妨げてしまうことがあります。

また、口を開けている状態が続くと、頬の筋肉が常に緊張し、歯列に内側からの圧力をかけ続けます。

この圧力によって、前歯が前に押し出され、出っ歯になる可能性があります。

遺伝

親や祖父母が出っ歯である場合、子供も同じような歯並びになる可能性が高くなります。

遺伝的な要因は、歯の形や大きさ、歯並びなどに影響を与えることがあります。

家族歴に出っ歯が多い場合、その子供が出っ歯になるリスクも高まります。

出っ歯のタイプ

出っ歯には主に2つのタイプがあります。

  • 上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)
  • 上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突は、主に上の歯や上あごが前に出ている状態を指し、上下顎前突では、上あごだけでなく下あごも前に突き出ていることを意味します​。

上下顎前突(じょうげがくぜんとつ)

上下顎前突は、上下の前歯が前方に出ている状態の歯並びを指します。

この状態では、上下の歯の前後の位置関係に大きな問題はなく、通常の咬み合わせを保っていることが多いですが、犬歯から奥歯にかけての咬み合わせに微妙なずれが見られる場合もあります。

また、この問題が歯そのものの突出だけでなく、顎の骨格に由来することもあります。

「口を閉じにくい」「口元が前に出て見える」といった特徴を持つことが多く、前歯部分の歯周病にかかりやすい傾向にもあります。

上顎前突(じょうがくぜんとつ)

上顎前突は、犬歯から奥歯にかけての咬み合わせが不正確で、下顎の歯が上顎の歯に比べて後方に位置する状態を指します。

下顎の位置は、後退している場合もあれば、正常な位置にある場合もあります。

この状態の人は、口を閉じるのが難しく、咬む機能が低下することがあります。また、顎への過剰な負荷がかかることで、顎関節症のリスクが高まることもあります。さらに、笑顔の際に歯茎が目立つことがあり、見た目に対するコンプレックスに繋がることがあります。

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出っ歯を放置するリスク

出っ歯を放置するリスクは6つ考えられます。

  • 虫歯・歯周病のリスクが高くなる
  • 消化器官の負担が大きくなる
  • 発音への支障になる
  • 見た目がコンプレックスになる
  • 頭痛や肩こりになりやすくなる
  • 口呼吸になりやすくなる

出っ歯は見た目の問題だけでなく、健康や日常生活にも影響を及ぼす可能性があるため、放置せずに適切な治療を受けることが重要です。

虫歯・歯周病のリスクが高くなる

出っ歯は、歯と歯の間や歯の表面に汚れが溜まりやすくなります。

特に、前歯が乾燥しやすくなると、唾液の自浄作用が低下し、虫歯や歯周病のリスクが高まることがあります。

唾液には口内の清潔を保つための抗菌作用や食べカスを洗い流す作用がありますが、出っ歯の場合、この唾液による保護機能が十分に働きにくい状態になります。

さらに、歯並びが不整になると、歯ブラシが届きにくい部分が生じます。

特に出っ歯による前歯の段差は、歯垢がたまりやすい環境を作り出し、適切な歯磨きが困難になります。通常のブラッシングでは除去しきれない歯垢や食べカスは、時間とともに硬化し、歯石となって歯周病の原因となることもあります。

消化器官の負担が大きくなる

出っ歯の状態では、前歯が正しく食べ物を噛み切る機能を果たさないことがあります。

このため、咀嚼(そしゃく)が不十分になり、食べ物を十分に細かくすることができず、その結果、消化器官に余計な負担をかけることになります。

正常に噛み合わせができない場合、人は無意識のうちに奥歯や片側の歯だけを使って食べ物を噛むようになります。この不均等な使用が続くと、顎の関節に過剰なストレスがかかり、顎関節症の原因にもなります。

発音への支障になる

歯並びが整っていないことで、空気が歯間から漏れやすくなり、発音が不明瞭になることがあります。

学校での本読みや、職場でのプレゼンテーションなど、支障が出るケースも多いでしょう。

さらに、前歯と上顎の間に大きな隙間がある場合、言葉の発音時に空気がその隙間を通過することで、発音がぼやけたり、周囲の人にとって聞き取りにくくなったりすることがあります。

見た目がコンプレックスになる

出っ歯は、多くの人にとって深刻なコンプレックスの原因となります。

特に、上の前歯が突出していることが顕著な場合、歯の突出が目立ちやすくなります。

人前で話す際や笑う際に、自然と口元を隠すような仕草が身につくことも少なくありません。

見た目に対する自信の欠如につながり、社会的な場面での積極性を損なうことにも繋がります。

頭痛や肩こりになりやすくなる

出っ歯による噛み合わせの問題は、顎関節に余計な負担をかけ、顎の筋肉のバランスを崩すことがあります。

この不均衡が、顎関節症の原因になることがあります。

さらに、噛み合わせの悪さが就寝中の歯ぎしりや食いしばりを引き起こし、顎の緊張を生じさせます。

顎の緊張は首周りの筋肉にも影響を及ぼし、結果的に肩こりや頭痛を引き起こす原因になります。

口呼吸になりやすくなる

出っ歯の状態が進行すると、前歯が突出して口が適切に閉じることが難しくなり、結果的に口呼吸の習慣が身につきやすくなります。

口がうまく閉じないために口呼吸に頼ることが多くなると、口内の唾液量が減少し、それに伴って口臭の問題が悪化したり、虫歯のリスクが高まったりする恐れがあります。

大人の出っ歯の治療方法

大人の出っ歯の治療方法は3つです。

  • ワイヤー矯正
  • マウスピース矯正
  • 外科手術

一般的にはワイヤー矯正やマウスピース矯正で治療をおこないます。

ただし、矯正で治療が困難な重症の場合は、外科手術を行う場合もあります。

ワイヤー矯正

ワイヤー矯正は大人の出っ歯治療にも適用され、矯正効果は高いとされています。

この治療法では、歯に小さな金属のブラケットを接着し、それらをワイヤーでつなぎ、歯を徐々に移動させていきます。

治療中は2〜3ヶ月ごとに歯科医院を訪れ、経過の確認や調整を行います​​​​。

ワイヤー矯正のメリットには、矯正器具の取外しが不要であり、細かい調整がしやすく、多くの適応症例に対応可能であることが挙げられます。

結果、効率的に歯を動かすことができます。しかし、矯正器具が目立つ、食事や歯磨きがしづらくなる、痛みや違和感が出やすいといったデメリットもあります。

マウスピース矯正

マウスピース矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を徐々に正しい位置に移動させることにより、出っ歯を改善します。

マウスピースは装着感が少なく、日常生活においても違和感が少ないため、多くの方が利用しやすいとされています​​​​。

治療の流れは、初回の歯科医師との相談と診断から始まります。

その後、患者さんの口内の型取りを行い、型に合わせてカスタムメイドされたマウスピースが作成されます。

マウスピースを定期的に交換しながら、歯を段階的に移動させていきます。

マウスピース矯正が適切に行われるためには、歯科医師による定期的なケアと経過観察が欠かせません。

外科手術

矯正で治療が困難な重症の場合は、外科手術が選択肢となることがあります。

外科手術では、顎の骨を切断し、正しい位置に移動させて固定します。

歯並びだけでなく、顔のバランスも整えることが可能になります。

子供の出っ歯の治療方法

子供の出っ歯は、小児矯正で治療を行います。

小児矯正

小児矯正の方法は、子供の年齢や出っ歯の状態によって変わります。

治療には、リテーナーやマウスピース、ブラケットといった器具が使われることが多いです。

これらの装置を使用して歯を少しずつ動かして、正しい位置に導きます。

治療は、歯科医院で定期的にチェックを受けながら進められます。治療期間は、症状の重さや子供の成長具合によって異なりますが、数ヶ月から数年かかることが一般的です。

大切なことは、子供が矯正器具を着けている間も、歯をきれいに保つことです。歯ブラシや歯間ブラシを使って、毎日丁寧に歯を磨くことが重要です。

小児矯正を始めるタイミングは、歯科医師と相談して決めるのが良いでしょう。早すぎる治療は子供にとって負担になることもありますが、適切な時期に治療を始めることで、より良い結果を得ることができます。

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よくある質問

出っ歯を治すと顔つきは変わりますか?

出っ歯を治す前は、前の歯が前に出ていて、口がきちんと閉まらないことが多いです。
そのため、いつも口が少し開いているように見えがちです。
しかし、矯正で前の歯を治すと、歯が後ろに引っ込み、口が自然と閉じるようになります。
結果、顔の形もスッキリして見えるように変わります。

出っ歯矯正でかわいくなることはありますか?

出っ歯を矯正すると、口の周りがスッキリして、顔がすっきり見えることがあります。
顔全体のバランスがよくなり、顔が小さく見えることもあります。
また、口が引っ込むことで、顔の中心線に沿った美しいライン(Eライン)が出来上がります。
話したり笑ったりする時に、歯や歯茎が目立ちにくくなり、横顔がより美しく見えるようになります。

出っ歯の矯正にかかる費用はいくらですか?

出っ歯を治す費用は、全体矯正の場合は約80万円から100万円、部分矯正の場合は約40万円から50万円程度です。
矯正方法やお住まいの地域、歯医医院によっても費用は異なります。

出っ歯の治療期間はどのくらいですか?

インビザラインの場合は6ヶ月〜2年半程度、ワイヤー矯正の場合は、表面矯正で1〜3年程度、裏側矯正で2〜3年程度の期間が必要となります。

出っ歯の矯正治療は保険適用されますか?

出っ歯の矯正治療は、一般的に保険適用されません。
前歯が出ていることが気になって矯正を考えている場合、「見た目の改善」を目指しているためです。
美しく見せるための矯正治療は、自己負担の治療になるため、費用がかさむことがあります。

出っ歯は自力で治せますか?

出っ歯を自分で治そうとするのは避けましょう。
自分で歯を押したり、マッサージすることで歯が動くと思うかもしれませんが、正しい方法ではありません。
実際には、不適切な力を加えることで歯並びのバランスを崩したり、噛み合わせを悪くしたりする可能性があります。
また、歯の根やその周りの組織にダメージを与えてしまう恐れもあります。歯を動かすには、正しい方法と専門的な知識が必要です。もし出っ歯が気になる場合は、専門家に相談してください。自力で治そうとするのはやめ、適切な治療を受けることが大切です。

出っ歯は抜歯が必要な場合もありますか?

出っ歯で口の前が出ているときは、前の歯を後ろに動かして、口の出っ張りを治すことができます。
口の出っ張りを大きく治したい場合、前の歯をかなり後ろに動かす必要があるため、歯を抜く必要が出てくることがあります。特に、口が閉じられないほど出っ張っている場合は、歯を抜くことが多くなります。

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