虫歯

虫歯とは

虫歯とは、従来は虫歯菌(ミュータンス菌)と呼ばれる菌が口の中の糖質を取り込むことで、酸を吐き出し、その酸によって歯からミネラルを奪って溶かす(脱灰:だっかい)ことで虫歯になると言われていました。
しかし、歯には唾液内の「カルシウム」や「リン」を取り込み、自ら回復する機能(再石灰化)があり、再石灰化と脱灰のバランスが脱灰に傾くと歯が溶け虫歯になると考えられています。現在は、虫歯菌というものが存在するのではなく、口の中の菌が酸を吐き出すことで酸に弱い菌が減り、酸に強い菌や糖質を取り込み酸を吐き出す菌が残っていくことで、虫歯になりやすい環境になるという「生態学的プラーク仮説」という考え方が広まってます。

虫歯の分類と治療の方法

従来、虫歯の治療と言えば、削って銀歯を詰めるという流れが保険治療では一般的でした。
しかし、歯科治療の考え方や歯科の材料が進歩する中で虫歯治療の方法も変化してきています。
虫歯の進行度による分類と、それぞれの治療について解説します。

ごく初期虫歯(C0)

まだ歯に穴は空いておらず、歯のエナメル質の表面が溶け始め脱灰をはじめたばかりの状態です。
濁った白色、黄色のような色の変化をしています。
痛みはなく、虫歯になりかけている状態です。

治療法としては、ブラッシング指導や、フッ素塗布なので経過観察する場合が多いです。
フッ素には再石灰化を促す作用があります。

しかし、虫歯の治療方針については歯科医師によって見解がわかれる場合があります。
脱灰が始まった原因を日々の生活習慣から改善しなければ、虫歯は進行する可能性が非常に高いことも留意するべき点です。

エナメル質の虫歯(C1)

歯が溶けはじめ、穴があき黒い着色が目立つ場合があります。
エナメル質でとどまっているため、痛みはないことが多いです。

治療としては、経過観察を行うか、もしくは虫歯となった感染した歯質を削って除去し、詰め物をする場合が多いです。
削る部分が少ないため、コンポジットレジンと呼ばれる白いプラスチックの詰め物で対応できます。

象牙質の虫歯(C2)

虫歯によってあいた穴が、エナメル質の奥の象牙質にまで到達している中等度の虫歯です。さらに奥の神経にまで到達していないのですが、冷たいものや甘いものがしみたり、軽い痛みが発生することがあります。

削る量によって、コンポジットレジンか、インレーと呼ばれる詰め物で対応する場合があります。

※インレーとは、その場で詰め物をするものではなく、型をとり技工所で型に合わせた詰め物の技工物を作成します。それを削った箇所にはめ込むことで治療を行います。
コンポジットレジンはプラスチック、インレーはセラミックや金属でできています。
必要な詰め物の大きさが大きくなったときに、プラスチックですと耐久性の面から適応できず、セラミックや金属のインレーを用いることが多くなります。

神経に達した虫歯(C3)

虫歯が歯髄(しずい)と呼ばれる神経にまで到達している状態で、非常に激しい痛みを伴います。
仮に歯髄が完全に死んでしまっている場合は、痛みがなくなりますが、虫歯は治った訳ではなく、より深く進行してしまっているということを示すことに注意が必要です。

治療としては、感染した歯髄をきれいに取り除き、根管と呼ばれる部分を消毒。
根管の中に薬剤の詰め物を詰め、かぶせ物を行うことで歯を残す治療(根管治療)を行う場合があります。
必要に応じてMTAセメントと呼ばれる充填物(じゅうてんぶつ)を詰め、歯髄を残す処置を行う場合もあります。

歯根に達した虫歯(C4)

虫歯によって、歯の大半が崩壊し歯の根だけが残っている状態(残根)です。強い口臭があったり、場合によってはずきずきとした痛みがあったりします。

C4の場合、歯の根の先のあたりを感染源として周囲の歯茎や骨、歯はもちろん全身に悪影響を及ぼす可能性があり、抜歯が必要です。
歯を抜いた後は「ブリッジ」「入れ歯」「インプラント」などで、失なった歯を補填する治療を行います。[インプラントへのリンク]

虫歯が見つかったのに「様子をみましょう」と言われたり、逆に歯科医師によって「虫歯がある」と言われたり「虫歯がない」と言われたりという経験があると思います。
なぜなら歯科医師の診断は、治療方針や患者様のライフスタイルを加味して変わることがあるからです。
もし不安になることがあれば、ぜひ当院に電話かお問い合わせフォームにてお問い合わせしてみてください。

なるべく痛くない虫歯治療

当院では患者様にとってなるべく痛くない治療を心がけています。
ここで当院が行っている痛くない治療についてどのようなことを行っているのか、解説します。

痛くない虫歯治療のステップ

  • 表面麻酔

    注射を用いた麻酔をおこなう前に、表面麻酔をおこなうことで注射による痛みを和らげるようにしています。
  • 浸潤(しんじゅん)麻酔の際に、極細針の使用

    浸潤麻酔をおこなう際に、当院では人間の痛みを感じる痛点の感覚よりも細い針を使っているため、浸潤麻酔を行う際の痛みを感じにくくしています。
  • 電動麻酔による制御と麻酔針の刺し方

    また麻酔液を入れるスピードをゆっくり一定に保つこと、針をななめに差し込むことで、注射時の痛みをさらに減らすことができます。
  • 5倍速コントラの使用

    歯を削る際に、タービンと呼ばれる機械とともに、コントラと呼ばれる機械を用います。削る箇所によって、5倍速のコントラを用いることで、タービン特有のキーンという音がせず痛みが少なく歯を削ることができるため、場合によって使い分けをするようにしています。

なるべく削らない虫歯治療

健康という観点において、自らの天然の歯よりすぐれたものはありません。
もし歯を削る場合であっても、なるべく削らずに天然の歯を残すように工夫しています。

軽度な虫歯の場合、削らずに経過観察する場合もある

虫歯と診断した場合でも、軽度な場合、歯の再石灰化の作用を利用して経過観察をする場合があります。
しかし虫歯の要因を減らし再石灰化がより促されるようにするために、歯ブラシ指導などを行うようにしています。

う蝕(うしょく)検知液の利用

う蝕検知液を使うことで、歯を必要以上に削ることなく、また削り残しを少なくすることができます。
従来、虫歯を削る行為は各歯科医師の感覚や経験など主観でおこなわれることが実は多かったものの、う蝕検知液を用いることで的確に感染した歯質のみを削ることができるようになり、当院でも採用しています。

極細ドリルやエキスカなど適切な器具を利用

歯を削るドリルには、さまざまな太さがあり、時と場合によって最適な器具を利用します。
また電動のドリルだけではなく、耳かきのような器具を用いて手作業で感染部位を取り除く場合もあります。
虫歯の部位はぼろぼろと崩れるようにとれるのですが、手作業で丁寧に取り除くことで削りすぎと取り残しを防ぐことができます。

審美的で機能的なセラミック治療と機能的な金歯

虫歯を削り、歯に詰め物をする際に、自費診療のセラミックやゴールドの素材を選択することができます。
実は保険診療は、日本人の誰もが低価格に高品質な治療を受けられる素晴らしい制度ですが、
保険治療では利用できる材料などが限られ、治療の選択肢も限定的です。
当院では、治療後の経過の良好さや、審美面から自費でのかぶせ物、詰め物の治療に取り組んでいます。

審美的で機能的なセラミック治療

審美的で機能的なセラミック治療

セラミックはいわゆる陶材のことで多くのメリットがあります。

  • 自然な色合いを再現でき審美性に優れる
  • プラークが付着しづらく清掃性に優れる
  • 削った歯との適合がよく、二次カリエス(虫歯の再発)リスクを下げられる
  • 金属アレルギーでも利用できる
  • コンポジットレジン(プラスチック)と比べて、劣化がしづらい

機能面で優秀な金歯

金歯は、ゴールドとも呼ばれたりします。
ゴールドは、自然な白い歯にはなりませんが、口腔内を健康に保つという面では現状の選択肢の中でもっとも優秀であると言えると考えます。

  • プラークが付着しづらく清掃性に優れる
  • 詰め物自体が、折れたり割れたりすることがない
  • 歯の固さに近く、噛み合わせる歯を傷つけづらい
  • コンポジットレジンやセラミックよりもさらに適合がよく二次カリエスのリスクを下げられる
  • 材料劣化による二次カリエスのリスクが低い
  • 金属アレルギーが起こる可能性が低い

虫歯治療のリスク

虫歯治療には2つのリスクがあります。

削った歯は、決して元通りにはならない

虫歯治療の技術は進歩し、治療後にはどこが虫歯だったのかわからない治療ができるようになってきましたが、削った部分は天然歯ではなくなっており本来的には元に戻っていないということを覚えておく必要があります。
治療した歯の虫歯再発率は高いことを覚えておくとよいでしょう。

虫歯再発(二次カリエス)のリスクがある

虫歯を治療したあとに、詰めた詰め物と歯の間で虫歯が発生することがあります。
例えば、保険で用いられるコンポジットレジンはプラークが付着しやすかったり、歯とレジンの間の接着剤が劣化したり、そもそも虫歯が取り切れていなかったりと原因はさまざまです。
虫歯治療における二次カリエスの割合は一説には80%と言われており、再治療のリスクを減らすことはもちろんですが、なるべく虫歯にならない取り組みが重要だといえるでしょう。

もっとも大切なことは虫歯を予防すること

虫歯治療で一番大切なことは、虫歯にならないように予防することです。
虫歯治療をして、歯を削った場合、二次カリエスのリスクも発生します。
健康診断をおこなうようなイメージで、定期的に口の中を検査してもらい、ケアをしていくことで虫歯や歯周病になるリスクを下げることができます。

よくある質問

虫歯治療が怖いです。放置するとどうなりますか

放置をするリスクについてお伝えします。まず虫歯による痛みを感じるリスクがあること、治療費が高額になる可能性があること、歯を大きく削ったり抜いたりすることになること、です。虫歯は初期であればあるだけ治療も楽で費用も抑えられるため、通院をされるのがよいと考えます。

自分で虫歯を見分ける方法はありますか

虫歯が見分けられるレベルになる頃には、虫歯が進行している状況ですので、ご自身で見極めようとするよりも歯科医院でチェックをしてもらう方がおすすめです。虫歯の見極め方としては「歯が白く濁っている箇所がある」「しみるようになった」「痛みを感じる」「歯に穴や黒い部分がある」などが考えられます。

虫歯で頭痛になることはありますか

頭痛があるのであれば、頭痛の原因はさまざまですので脳神経内科など専門の医療機関の受診をまずおすすめします。ただ一般的に虫歯によっては、頭痛を引き起こすことがあると言われているようです。

虫歯の原因はなんですか

細菌によって吐き出す酸が、歯を溶かし虫歯を引き起こします。
一部の細菌は、糖質を取り込むことで酸を吐き出すため、甘いものをよく食べる方は虫歯になりやすいと考えられます。
また食べカスなどによって生まれるプラークは細菌の温床であり、これらを除去することで虫歯リスクを下げることができるようになります。

虫歯は自然治癒しますか

虫歯は基本的に自然治癒しません。歯の再石灰化という仕組みはあるものの、虫歯を引き起こした生活習慣が改善されない限り、虫歯は進行します。また虫歯の痛みが急に消え去った場合は、歯の神経が死んでしまったということで虫歯は進行していると考えます。
歯科医院への受診、相談をおすすめします。

虫歯の治療後にし みることがあります。どのようにすればよいですか。

痛みについては数日で収まることが多いので、まずは待つようにしてみてください。もし2,3日たっても痛みがひかない場合は、歯科医院に相談するとよいでしょう。
特に象牙質を削るなどの場合は、神経の末端を刺激しやすくなるためしみることが多くなると思われます。

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